たくさん浪人した友人との出会い
私には、何年も浪人を経験し来年医師国家試験を受験する友人がいる。彼とは小学校から高校まで同窓だったが、私と積極的に接点を持ち始めたのは彼が浪人生を繰り返してからだった。当時学生だった私は釣りによく出かけていたのだが、それを知っていた友人が一緒に釣りに行きたいと連絡をくれたのだ。浪人生と遊ぶことは気が引けたが、折角なので一緒に行くことになった。
彼は運動神経が抜群によく、加えてイキの良い青年であった。釣りも例外ではなく、たちまち私よりも上手になっていき、次第に私抜きで一人でも出かけるようになり、そして持ち前のコミュニケーション力で釣り場での知り合いも増えていった。友人は元よりその知り合いから釣れる場所やルアーを教えてもらう様になり、私の釣りライフも非常に充実していった。
一方で、やはり浪人生と釣りをすることへの後ろめたさは何処かで感じていた。友人本人だけでなく御両親に対してもだ。ある夏の日、私と友人がサーフで釣りしていたとき、お父様が後ろでゴルフのバンカーの練習をしていた。そのとき、お父様に「医学部の受験は難しいね」と訊かれたのが、何と返して良いか分からなかった。嫌味な印象は全くなかったのだが、浪人生を釣りに連れ出している罪悪感みたいなものがあったからだ。
幸か不幸か、大学の実習が忙しくなり始めたことをきっかけに、私は自然と友人とは釣りに行かなくなっていく。
その数年後に彼は見事医学部への合格を果たした。
医学生となった友人との再会
先日その友人と再会した。世間話でもしようと、私が釣りに誘ったのだ。
釣りしながら、「あのとき釣りに連れていってくれて助かった。本当にメンタルが病んでいた。」と話しだした。そして「(私と)一緒に釣りに行かなくなった後に、釣りコミュニティの人たちにもう一年頑張れと言われた。それで合格できた。」と続けた。まず、そこまでメンタルが落ち込んでいることを察知できていなかったので驚いてしまった。そして、そんなことがあったのかと思うと同時に、自分の後ろめたさも解消された気がした。しかし、今考えても浪人生と釣りに出かけるのは異端だったと思う。
医学生の友人はテストでは好成績を収め順調に進級していた。そして医師国家試験を受けようとしている。なにより元気そうで、「全く後悔はないよ」と話してくれた。私はそれが一番嬉しかった。医師国家試験の合格したら、質の良い釣り具をプレゼントすると心に決めた。

